物語の始まり



紹介


『人間の子よ、何故神を欲するのだ――?』



 高校一年生の少年、古宮優希(こみや ゆうき)。
 ある日の帰り道、彼はクラスメイトの紫明敏(ゆかり あきとし)が、異形の鬼と闘っている場面に遭遇する。
 明敏につき従うのは、金色の鬣を持つ龍神。そして、守護妖と呼ばれる妖怪たち。
 戸惑いを隠せない優希に、明敏はおのれの正体を明かす。
 破邪退魔を業に負い、神と戯れ、神と共に闘う、神縁の一族。その総本家の現当主が、自分であると。
 同時に明敏は優希に言った。


「神使いになって、紫家の仕事を手伝ってほしい」



 なぜ明敏が、自分に目をかけるのか。わからないまま、優希は成り行きで明敏の「家業」に同行することになった。
 そして夜中に赴いた先は、奇怪な現象が起きると訴えのあった、とある神社。
そこには、千年の昔に封じられた祟りなす神が待ち受けていた。

 祟り神の力は強大で、明敏が神と妖怪を従えていても、苦しい戦いとなることは明白だった。
 明敏は「一緒に戦う」と言う優希を「お前には無理だ」と無理矢理に突き放す。
 優希を逃がし、自分は激闘の最中へ。
 その中で流れおちる、ひとひらの命。


  
「明敏さまの傍で、どうか、支えてあげてください……」



 切なる願いを受けて、優希は神を得る決意をする。
 これ以上の犠牲はいらない。
 自分だけ戦いから逃げるなんてできない。
 力が足りないから戦わせてもらえないというのなら。
 この手が、なにものをも掴むことができないというのなら。


  ――力が、欲しい。


『守るために、今…どうしても必要なんだ――!』



 そして、もたらされたものは……






巡る因果、つながる絆
人と神と妖が紡ぎだし、
古より流れ落ちる珠玉の夢幻草子
―― ここに開幕――




2007年8月 文芸社刊行                    
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